傍に居たいのと居るのには大きな壁があったりする訳で



それはまぁ所謂フツウの世界で生きている側には
あまり関係ないのかもしんないけど

何等かの事情があったりする側の人間にとっては
とてつもなく大きな壁だったりするわけで






















Venus Panic







「…綾那?」


どうかしたの、と順が問う
吐息が耳に掛かって少しゾクリとした









情事の後の順の声はやけに艶やかだと思う
本人に自覚があるかないかは知らないけれど

実はひそかにその声が好きだなんて事は知らないだろう、確実に










「…なんでもない」

気恥ずかしさ半分、困惑半分
ぶっきらぼうに答えを告げる

今考えていた事は順に知られたくはなかった
多分コイツには隠し事なんて通用してないだろうけど



しかし思いの他あっさりと引き下がってくれたとこを見ると何かを察したのか










「いいけどさっ」




また耳元で声が揺れて
こっち向いてよ、と順が言う

向き合う形になれという要求
言葉の端に私を気遣う気配が揺れた









何でこいつはこうゆう事に聡いのか
とうとつに切なくなる

普段が普段な分、どうしようもない感覚が胸によぎる
こいつは多分、私よりずっと「大人」なのだ










「…ね、綾那」



いつまどたっても動かない私を諭す様に順が囁く
その声は園児を言い含める様に柔らかで

そのくせやけに甘く響く











「気付いてる?」

甘い、甘い
普段は絶対言わない甘い囁き

それはどうしようもなく切ない
それは禁断の果実の様に



…罪の上にある甘さだから











「涙」

「…っ!!!」













いつの間にか身体を覆うような形で順が私を覗き込んでいた




目尻を優しく指がなぞる
どこまでも優しいまま順は微笑むのに

反応して見上げた顔は
酷く苦しげに歪んでいた










「綾那、綾那」




それでも順は私を気遣う

それは順の良いところだ
…それは順の悪いところで












「綾那はさぁ…怖いの?」







順はやわらかい笑顔で尋ねる

何が、とは聞けなかった
それは当たらずしも遠からず、といった内容で













「…違う」

ようやく吐けた言葉も相変わらずにぶっきらぼうで
軽い自己嫌悪を覚える














「んじゃさ、背いてるから?」

「………。」



背いているから、悩んでるの?










今度の問いには、違うと伝えられなかった
それは驚く程核心を突いた正解で

少し顔にそれが出て順にやっぱりね、と言われた














「…おまえは」

そうゆう事、考えないの?
尋ねようと口を開けるとふんわり順の指がそれを拒んだ











「あのね、綾那」

「…ん?」










順は笑う
強がりの笑顔












「あたしはさ、それでも構わないんだ」


愛しすぎちゃったから











順は囁く様に吐いた
呟く様に、悲痛な声で

笑顔は胸に突き刺さる













盲目に道化を演じると、言い切る順は愚直なのだろう

だけど、言い切る勇気もない私は
きっとずっと卑怯なのだ









「…おまえ、酷い顔してんぞ」

「あっ、ひっどーい!せっかく順ちゃんが慰めてあげてんのにー!」







「ばーか」

「なにさー」








「おまえホント馬鹿」

「どーせ馬鹿ですよー」










「順」

「ん?」









「…ありがとう」

「…うん」












ねぇ、順

私たちはやっぱり子供だ
私も、たぶんお前も






それでも

この想いが罪でも
例え虚構でも








愛していると、囁く
その甘さはきっと本物で

それは確かな現実で



一時の夢、と言われても
きっと忘れる事さえ出来ないだろう

そう、たとえ…記憶が、消えても















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某有名声優ユニットの曲より

ヤツラが好きだ(コラ